忘れられた俳人 河東碧梧桐 (平凡社新書)

碧梧桐のことを「忘れられた俳人」とまで言うか。無論、河東碧梧桐を愛してやまないから上梓したんだろうけど。そんな憐憫の情をかけられてヘキちゃん(勝手にそう呼ばせてもらうよ。寿限無じゃないが名前が長いから)は喜ぶのかなあ。なるほど革新の志半ばで逝った感はあるが、俳句行脚の途次で「我々が十年間今後努力してある仕事をして置けば、後継者は芭蕉における蕪村の如く、百年乃至二百年位の間に生れるであろう」と大言を吐いた傑物のことだから「情けは無用」と高みから笑っていることだろう。

著者はただ「歩く人・碧梧桐。三千里の旅の第一歩、いっとう寒冷の季にひとり北を目指してゆく……」果敢な男を描きたかったのだという。その点は果たせていると思うし、わたしは個人的に子規さんより好きだから、ヘキちゃんの旅のドラマ仕立ての映画があってもいいとさえ望む。

 

余談。碧梧桐と張り合いつつも彼の句集を編んだ乙字との交流ももっと知りたくなった。

 

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