サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か (平凡社新書 553)

マイケル・サンデルの哲学講義が大ブームになったことがあった。当時のわたしは、哲学に希望を持てないでいたのと、流行りに迎合したくないことを言い訳に無視していたのだけれど、今ちょっと後悔しつつ、本書のおかげでサンデル哲学の価値を知ることができて安堵している。かれの哲学の偉大さ(のひとつ、といわれるものだが、わたしにはこれこそ真価と映る)は、今の(政治的)問題を正しく認知し議論を深めるためには古典哲学に立ち戻って初めて、問題の本質が見えるのを教えてくれたこと。

哲学(に限らず学問すべて)の歴史は学問的に発展的累積のそれだと考えがちだが、分化の歴史に過ぎない面もわすれちゃだめ。古代の古典的学問は学問でありつつ思想であり宗教であるような思惟思考・精神作用の総体にルーツを持っているのだ。人間は哲学だけで生きるわけでもないし、政治だけで幸福を論じられるわけじゃない。

具体的な内容については、この新書版で濃密・シンプルに紹介されてる。著者・小林正弥氏に感謝。

 

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