きのうの作者・藤沢周平について知りたくなって読んだ。
【内容】
直木賞受賞作「暗殺の年輪」をはじめ数々の名作を発表し続け、没後15年を過ぎてなお読者の心を惹きつけて止まない人気作家の生涯を、郷里・山形からのまなざしで描いた力作評伝。
【所感】
山形庄内出身のかれは郷土愛がすこぶる強い。(著者笹沢も山形。)
小説の舞台は郷里の自然を写し取った匂いが漂っているようだし、土地の風土までも染み込んでいたのだろう。方言にまつわる推敲と、版を重ねるたびの修正エピソードなど貴重な裏面史にも感歎させられた。
そんな中でも、大いに印象づけられたことが2点。
1点は、藤沢さんのこと。人生における曲折明暗が、その時の作品の持ち味に影響していた事実。
もう1点は、同郷のファンであり活字デザイナーの鳥海修さんが藤沢周平作品にふさわしい書体を6年がかりで創り上げ、それが完成から4年後に念願叶って『海坂藩大全 上下』の書体に採用された話。
とんでもないファンがいることに頷くともに、フォントの力もまた小さくないと信じたい。
【評価】★★★☆☆