こぼればなし(『図書』岩波書店定期購読誌2021年7月号)
『図書』の編集後記(こぼればなし)は編集者の本音(あるいは、そうと思わせたいモノ)が溢れていて興味深いのだが、今号では迫り来る東京オリンピックネタに因んで、前回1964年の東京オリンピック直前・直後に『図書』でどう扱って…
『図書』の編集後記(こぼればなし)は編集者の本音(あるいは、そうと思わせたいモノ)が溢れていて興味深いのだが、今号では迫り来る東京オリンピックネタに因んで、前回1964年の東京オリンピック直前・直後に『図書』でどう扱って…
小気味よいテンポで文章の波が五感すべてに作用してくる、といった感覚にひたる。とりわけ嗅覚、触覚がリアルに沸き立つような表現たちは気持ち悪い部類のはずなのに、さらっとしていて不快感を引きずらず、物語の進行を妨げないでいる。…
本が届いた! 読書のまえに・・・すこぶる気になっていたことを確認する。表紙絵の黄色い人間?の正体は、ストレッチマンではなくて良かった。逆さになった女性であることが判明。ということは、池から突き出て見える二本の足は、その女…
虚しさ哀しさばかりが残る中高年の末路。著者あなたは何を視ているのでしょうかと、寄り添いたくなる読後。それが端から狙いだとしたら途轍もない大作家なのだと想う。添付の著者近影のまなざしもそれを考えさせてくれる。韓国は、日本の…
2年前に読んだときは後に何も残らなかったのに、手話のことに少しばかり関心を寄せている今、読み返してるうちに胸が熱くなる自分にハッとした。声帯の手術をした元彼が、自分のことばを探している。 言葉ってさ、と彼が言った。「他の…
ゆるく。それは生ぬるく聞こえるが、途轍もなく一途に、周辺にまとわりつく粘着思考を離れる考察態度を意味していた。外野の声を遮断して「考え続ける」価値を教えられた気がする。その意味では気易く「エッセイ集」と呼んでしまっては軽…
今、兵庫県神戸に暮らしながら、本年1月で丸26年を迎えた阪神淡路大震災以降に移り住んだ著者の「よそ者」感は半端ない、らしい。・・・逆に、今は阪神エリアに居ないながらも大震災で住居全壊体験したわたしは、事あるごとに被災体験…
「学力偏重主義ーー容認されている最後の偏見」この第4章タイトルが一番しっくりきた。能力至上主義はかつての上流階級中心の社会像を変えたように見えて、さして流動的な平等社会を築けていないばかりか、正義面した偽善者そのもの・・…
帯の表紙部分にある武田砂鉄さんのコメントは絶妙。 ボクには理解できるよ、という傲慢な批評を、細かく切り刻む鋭利さに痺れた。 1990年代に生まれた写真の新潮流を、写真家業界のあっちとこっちの目線、さらにメディア目線まで丹…
これぞ短編って感じの傑作。小学生の日常に、未確認飛行物体が登場するにもかかわらず、それは本題でないから謎のままスルーし、身近に自傷行為者がいるのも事実として存在するだけでそれ以上の展開も詮索もしない。小学生が同級生や、ま…