期待はずれの「子どもらしさ」考だった。(期待値が高すぎたに違いないので筆者の責任ではない。)予想通り「七歳までは神の子」説を持ち出して、伝統あるいは近代の俗説かと述べておられるのは自然の展開だろう。宮本常一さんが書いた「和泉の国の青春」などに見られる、ませすぎた子どもの存在した時代への哀感はそのまま現代の海外における極貧社会に重なって、一層子どもの人権について考えさせられる。
ただ、わたしの最大の関心はわが国における「こども」という呼称そのものにある。どんな漢字を宛てるかはどうでもいいが、元来「こども」は「子」どもという複数名詞ではなかったのか。(言語学の範疇かも知れないが)複数の子らを指していた言い方がどのようにして単数扱いとなったのか。(餓鬼ども、小娘どもは今も複数形なのに。)文献的に、あるいは民俗学的に「ひとりのこども」の存在はいつの時代まで遡れるのだろう。そんなことを思い巡らしながら、子どもらしい子という時には個性を排除して理想的な子をイメージしたように思う。時代ごとに、大人どもの描く理想の子像は変化してきたのだけれど。
《参考》過去の「女らしさ」の巻は、こちら。「男らしさ」の巻は、こちら。
なお、文中で参照されてあった柴田純さんの幼児史に関する論考を今、取り寄せているので、読んでから報告したいと思っているところ。
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