日本の音を聴く(1983年版)

芭蕉が聞いた音の世界を想像して、翁の俳句から開口母音の数量解析するなんてユニークな手法には驚いた。それでも総括してみると「あまりにも当然すぎる、平凡な結論」と冷めたまとめをしている。職業:作曲家、音楽評論家、音楽学者の柴田南雄さんの日本音楽談義はこの表紙に象徴されるように、実に論理的な探求の成果がつまっている。経歴をwikiでしらべると東京帝国大学理学部・文学部ご出身とあって、なるほどと合点した。

いたるところで日本の音楽(あえて邦楽とよばずに日本人の音楽的感性全般に言及)と洋楽を比較しているが、日本の楽器を「邦楽の楽器」と一口に言い切ってしまえない豊かさで論じているのは新奇でわくわくした。門外漢のわたしは、邦楽の音程は半音ずれてるのが日本的、みたいに漠と考えていたが、すべてがそうでないこと、又ずれているのは敢えて調律しないで「ずれ」を愉しんだのが日本的なんて解説に奥の深さを知った。さらに、おなじ日本の楽器でも材質選びなどで昔と今(1983年当時)で随分ちがうことにも興味をそそる。日本的、にはいろんな意味合いが籠もっているのだ。

 

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